チヌ掛り釣り竿 

1.チヌ掛り釣り竿、動機など

山陰でカワハギを釣っていると、もっと柔らかい短竿が欲しくなりました。食い込みが良いだろうとの考えからです。それなら、チヌの掛り釣りの竿などが良さそうです。チヌ掛り釣り竿は15年程前に作っています。その時の竿は、タイコリールを使う事を想定していましたので、ガイドを上向きから、下向きになるように途中で方向を変えています。今回は、スピニングリールを使う予定ですので、その竿は使えません(一部方向を変えていない竿もありましたが)。ただ、結構面倒だったのを覚えていますので、新しく作る積もりはありませんでした。
そんな時に、釣り具店「つりの一番館」の閉店セールがありました。ジョイントを売っていたのは、「つりの一番館」だけだったので、つい閉店セールに釣られて買い込んでしまいました。ついでにソリッド穂先も買いました。後、必要なものは手元にあります(あるはずです)。手元の布袋竹もあります(そう思い込んでいました)。それでも、この冬に作ろうとは考えていませんでした。
手持ちの布袋竹を調べて見ますと、少し太めで、細い物はありませんでした。時期的には11月に入った頃です。竹を刈るのは冬で、大体11月から1月に掛けてが良いと言われています。ちょうど、その時期に当たっています。
取り敢えず、布袋竹を刈ってきて干して置きました。2,3ヶ月晒していた方が良いのですが、どちらにしても火入れをしておかないと、駄目になってしまいます。1ヶ月ほど晒した頃、時間が取れましたので、火入れをしました。

2.布袋竹、火入れ

火入れの前に、竹の節を抜いておきます。ドリルドライバーに鉄線の端を尖らせたものを通すだけですが、まだ、竹は曲がったままですので、結構難しいです。これで、一番良かった布袋竹をダメにしました。
私は、火入れに練炭コンロを使っています。火入れの量が少ない時は、練炭を半分に切って使います。火口には、耐火煉瓦を並べています。こんな具合です。

火入れしますと、最初は油が浮いてきます。

さらに、火入れしますと、油と共に表面の汚れも浮いてきます。これらは出来るだけ綺麗に拭き取ります。

タメギは、15年程前に作ったものが残っていましたので、それを使います。竹を炙り、タメギで曲がりを修正していきます。この炙るのが難しくて、焦がしたり、暖め足りなくて、3本ほど折りました。

比較的、上手に火入れが出来た物ですが、少し火入れが足りないかも知れません。

火入れの終わった布袋竹です。焦げたり、折れた残りなどが混ざっています。私には、半日でこれ位火入れするのが限界です。

火入れの終わった布袋竹の中で細身のものを書斎に持ち込みました。この中から、掛り釣り竿に合う物を選び出します。

3.手元竿の準備

先に、作り上げたものをあげて置いた方が説明しやすいです。ここまで作ります。

手元に使う中空ブランク(以下ブランク)は、手持ちの竿の廃品です。比較的最近の竿でしたのでカーボン素材で出来ていました。2本分は手持ちがあったのですが、予備を考えて、撒き餌ヒシャクの柄の部品を追加購入しました。
手持ちの竿の部品にジョイントのメス部品を差し込んで大まかな切断場所を決めます。後で、塗装の為に竿の部品の塗料を取りますので、あくまでも、仮の切断場所です。後で微調整をします。切断には、目立てヤスリを使います。

ここで怪しげな行為をしています。穂先のソリッドは15年ほど前に作ったチヌの掛り釣り竿の穂先です。その穂先を竿の部品のお尻から入れています。
実は、15年前と同じ事をしていては進歩が無いので、今回の制作では、「穂先の収納」と「手尻の処理」を気にしていました。この画面は、穂先を手尻に収納出来るかどうか調べている所です。何とか、途中までのガイドを小さくすれば、ギリギリ収まりそうだと言う事は分かりました。後、布袋竹の部分に収まるかが問題です。結果的に、手尻に収納することに成ったのですが、この時点で、穂先収納用の黒竹を購入済みでしたので、黒竹を使っていれば、別の制作記が書けていたでしょう。

ウキ作り用のモータにグラスソリッドを取り付け、それに手元ブランクを差し込み、回転させます。ペーパーを当てて、塗料を取ります。

手元ブランクにジョイントメスを差し込み、切る場所を決めます。1番上のブランクには、さらにジョイントオスを差し込んで参考にしています。切る場所が決まれば切断します。

ブランクの先に木の栓をしています。この栓には小さな穴を開けています。こうする事により、竿尻から入れた穂先はこの栓で止まります。

次に、布袋竹の穴を広げます。こんな道具を使います。これも、15年程前に作って置いたものです。別の端をウキ作りモータや電動ドリルのチャックに咥えてさせて回転させます。

注意しないと、竹が割れますし、竹が熱くなって火傷します。

ブランクを竹に差し込む訳ですが、やはり竹の先端の所で少し緩くなっています。これは、ブランクが先に向かって細くなっていますのでやむを得ません。ブランクに糸を巻いて調節します。後で接着剤を入れますのである程度余裕がある方が良いようです。この時、注意しないと竹が割れてしまします。

写真はありませんが、ブランクを繋いでみますと布袋竹との繋ぎ目で曲がっています。火入れをして、曲がりを修正します。

4.竿尻の処理

竿尻の処理ですが、前回は、尻っ手輪を付けただけでした。今回は、穂先を手元に納める積もりですので、何らかの蓋(栓)を作る必要があります。簡単な方法は、
単に、木(又は竹)の栓を作る。これは、印籠継ぎの要領で栓を作るものです。簡単そうに見えて結構面倒です。それと栓が抜ける可能性もあります。
次は、やはり栓を作るのですが、今度は口栓の要領で作る物で、少しきつめに作り、ノコで切れ目を入れておく物です。これも栓が抜ける可能性もあります。
次は、釣り具店に売っている、竿尻に被せる感じのネジ蓋を付ける方法です。これは、釣り具店まで見に行きましたが、高くて(大体800円程)、しかも作っている竿尻に合う物がありませんでした。
次は、ペットボトルの栓を利用する物です。栓のオス部を(切り取って)布袋竹に付け、メス部で栓をするものです。大体サイズは合いそうですが、布袋竹と比べて、あまりにもアンバランスです。
結局、採用したのは、以下に紹介するようなボルトとネジと埋め込む方法です。

ネジは、M12(直径12mm)で、現在、私の作れる最大サイズです。このサイズで、穂先が通る事を確認しています。材質は、アルミにします。削りやすいのと、錆びにくいだろうと思っての決めました。12Mの市販のネジとボルトも購入しておきます。
14mmのアルミ棒に10.5mmの穴を開けます。さらに12Mのタップでネジを切ります。

15mm程の長さに切って、ナット部のできあがりです。写真は、市販の12Mのボルトにねじ込んで具合を調べています。 これを、布袋竹に差し込んで接着剤で固定する予定です。

続いて、ボルト部をダイスで切ります。ここで、軸がずれて何回か作り直しました。ボルト部は、長さを35mm程度に切ります。

写真にはありませんが、ナット部に合わせて布袋竹尻の開口部を広げます。これは、適当なドリル刃が無くて苦労しました。 布袋竹にナットを差し込み、ボルトをねじ込んだ所です。これは仮ですが、その後、ナット部は接着剤で固定します。

竿尻(栓)を作る作業がありますが、それは後ほど。

5 手元竿の準備2

布袋竹の窪みを木工エポキシパテで埋め、50番の絹糸を巻きます。上の2つは、パテで埋めた物(乾燥後ペーパーで整えます)、下は 絹糸を巻いた物です。絹糸を巻くのは嫌です。1本巻いただけで疲れてしまったので、写真を撮る気になったものです。
糸を巻く前に、ブランクと布袋竹の接続部の曲がりをチェックします。大丈夫でした(1回手直しの火入れをしています)ので、ブランクとジョイントメス、ブランクと布袋竹を2液混合型の接着剤で固定します。その後、黒のカシュー漆を塗ります。

穂先にジョイントオスを仮固定し、全体の調子を見ます。手元に穂先を納めるには、少し穂先が長いようです。

穂先を詰め、再度穂先のソリッドを削ります。削り方は、ウキ塗り用のモータのチャックにソリッドを咥えさせ,低速度で回転させながら、水ペーパーで水を付けながら、注意深く削ります。ウキ塗り用のモータはパワーがありませんし、回転が遅いので好都合です。その代わり時間は掛かります。削るのに真剣に取り組んでいましたので、この時の写真はありません。ソリッドとジョイントオスを接着し、ソリッドとガイドを固定します。
次に、ソリッドにガイドを取り付けていくのですが、手元に納める関係からm最初の6個は最小のガイド(Fujiミニクロガイド1.5s)を使い糸(補修糸極細)を糸を切らずに巻いていきます。糸を切らないのは、ラインと竿の間のべとつきを軽減する意味もあります。7番目以降は、実際に手元に納めて様子を見ながら、少しづつガイドを大きくしていきます。そのようにして出来上がったのが、次の写真です。2枚目には、ブランクと布袋竹間の細工が写っていますが、無視して下さい。

ブランクと布袋竹の段差が気になっています。次の写真の手前の竿は、昔作った竿です。段差のあるまま、細工はしていません。このようにしようかと思っていたのですが、布袋竹の窪みを埋めたエポキシパテが残っていたのでパテを入れて、段差を緩やかにします。

パテが乾いた後、ペーパで形を整えます。ここで、パテの上に絹糸を巻くかどうか迷いました。補強の為には、糸を巻いた方が良いのです。でも、もう糸は巻きたくないので、そのままカシュー漆を塗る事にしました。
手元竿にも、ガイドを付けておきます。ここで失敗。ガイドを取り付けて竿を振るとカタカタと言う音がします。もしかして、ブランクと布袋竹との接続部から音が出ているのかと思って心配したのですが、実際は、ガイド部からでした。取り付けたガイドの内、2個は、内部のリングと外側のケースの間にクッションが入っていないものでした。外側のケースを縮めて固定しようと悪戦したのですが、力が入りすぎて、内側のリングを割ってしまいました。
新しくガイドを買ってきて取り付け直しました。

6 竿尻(栓)の制作

竿尻用のボルトとナットが出来ましたので、竿尻の制作に取り掛かります。まず、竿尻用の木材を用意します。それに下穴を開けて、タップでネジを切ります。注意しないとネジ山はすぐ壊れてしまいます。最終的には接着剤で固定しますので、竿尻の木材の成形まで、なんとか持てば良いのです。写真では4個作っていますが、1個は予備です。

次に、市販のボルトを2つに切ります。その為に長めのボルトを買っていました。ボルトが竿尻に入る事を確認後、頭のないボルトをねじ込みます。後の工程を楽にする為、竿尻用の木材を少し成形しておきます。

ボルトを旋盤に咥えさせ、竿尻を削り出します。2枚目の写真は削り出しが後、ペーパーを掛けたものです。

仮に組み立ててみました。実際は、この後、尻っ手輪の穴を開け、尻っ手輪を取り付け、接着剤でボルトを固定します。

7 塗り

さて、ここで失敗を紹介。

塗料を乾かしている所ですが、手元竿(布袋竹の付いている方)が垂直ではありません。実は、面倒だったので、電動ドリルで穴を開けたのです。きちんと、ボール盤を使うと、

塗りですがまとめて置きます。
穂先部分
先端の5節:白を2回、蛍光塗料、本透明1回。ガイド部分は黒2回。
それ以外:黒2回
手元のブランク部分:黒2回、マイラー振り掛け(キラキラ塗り)、本透明2回、研ぎ出し、本透明2回(タンポ塗り)。
布袋竹部分の糸巻き部分:黒2回、研ぎ出し、後は、ブランク部と同じ。
布袋竹部:透き1回(タンポ塗り)、本透明2回(タンポ塗り)。
竿尻部分:透き3回
注:「タンポ塗り」はパンティストッキングなどで「タンポ」を作り、薄いカシュー漆をタンポに含ませ、竿に擦り込むように塗る方法で、拭き漆の技法です。

書いていて嫌になります。それ以外に「芽打ち」、「リールシート」の取り付けなど細かい部分があります。

途中の写真です。竿尻部分には、尻っ手輪を付けています。穂先トップ部分は、この後、蛍光塗料を塗り、ガイド部にカシュー漆黒を2回塗ります。

マイラーを振り掛けた後、2回本透明を塗ったものです。「キラキラ」が綺麗に出ています。

穂先部分です。好みがあるのですが、ここでは、トップから、黄、白(実際は塗らない)、赤、白(実際は塗らない)、黄の蛍光塗料を塗った所です。蛍光塗料は、光線の関係でうまく写っていませんが、実際はもっと鮮やかです。

マイラー振りかけ後、2回本透明を塗ったものを研ぎ出したものです。この後、本透明2回(タンポ塗り)を行います。

本透明2回(タンポ塗り)を行ったものです。

「リールシート」を取り付けます。今回は、スピニングリールを使いますので、リールシートの付いている方が下になります。使う時は、芽打ち部分が水平になります。これが、竿作りの常識なんだそうです。
今、思い出しても、布袋竹に糸を綺麗に巻くのは難しかったです。又、竿尻と布袋竹の間にクッションを入れています。クッションはクラリーノの2枚重ねです。
5本写っている内の奥側2本は、昔作ってものです。少しは進歩しているでしょう。

8 完成 やっと、完成です。ちゃんと、穂先は、手元に収まります。