1.動機など
私のHPを見て、タナゴウキを作って欲しいと言ってきた人がいます。岡山でタナゴが釣れる所で私が知っている所は、旭川の支流で川幅がかなりあります。関東でのタナゴ釣りとは様子が違いますので、私ではテストできません。まあ、テストして呉れるなら、試しに作って見るかと言う気になりました。丁度、時間が取れる時期だった事も幸いしました。
「タナゴウキ」ってどんなウキだろう?私の知っているのは、主にシモリウキです。それとは違うようです。インターネットで調べると、超小型のウキでした。大体、全長2cmぐらいのものを作れば良さそうです。ただ、「中通し」とか「斜め通し」とか言うものが主流のようです。これは、困りました。「中通し」を作ると細工絡みで大きくなりそうです。「斜め通し」は綺麗に塗るのに苦労しそうです。桐を使わないと強度がでそうにありません。
そんな時、肩の所に糸通しの輪を作る方法を紹介した書物があったのを思い出しました。結構苦労しましたが、何とか見つけ出しました。(手作り釣具ハンドブックと言うムック本だったのが幸いして、処分していませんでした)。読み直して見ましたが、発泡スチロールを使っているにも関わらず、「瞬間接着剤」を使っていました。「瞬間接着剤」は
発泡スチロールを溶かすので、要注意です。(発泡スチロールを使う場合、蛍光塗料にも注意が必要です)。接着剤はその内テストして決めることにしましよう。
ボディの材質は、発泡スチロールでウキ足には、1mmと1.2mmのカーボンを使うことにしました。塗りは、キラキラ塗りです。(桐を使うと、馬井助風の塗りをしたくなります。2cmほどのウキに馬井助の塗り分けするのは、考えただけで憂鬱になります)。
2.デザイン、テストなど
ウキのデザインです。インターネットで探しながら、好きなデザインを紙に書き出します。私がウキを作るときは、簡単なデザインをしていますが、今回は、初めてということもあってちょっと丁寧です。肩の部分に糸通しも付けています。
長いトップの付いたウキは、足が1mmのカーボンでボディを貫通しています。トップに蛍光塗料を塗る予定です。短いトップのウキは、足が1.2mmのカーボンでボディを貫通しています。トップにパイプを被せて太くした後、蛍光塗料を塗る予定です。
![]() |
|
![]() |
テストです。糸通し関係です。ラインの号数(1.5号、2号)、結び目(ラインを結び穴に入れて接着。抜けにくくする為)、穴の大きさ(0.3mm、0,4mm、0.8mmなど)、接着剤(瞬間接着剤、Super-X)などを調べました。結論は、ラインの号数は、1.5号、結び目はなし、穴の大きさ、0.3mm、接着剤は、Super-X としました。なお、穴はドリルで空けます。(ウキの足の入る穴は、針を使って広げます)。ドリルの歯はホームセンターに0.2mmから、0.1mm刻みで2.0mmまで売っていました。もし、手に入らないときは、針の軸を叩いて、ドリル歯紛いを作る積もりでした。
3.ボディの製作
カーボンの足は、カッターで適当な長さに切ります。両端は削って尖らしておきます。
モーターで回転させると、簡単です。
![]() |
|
![]() |
ボディーの発泡ですが、足(軸)が貫通するものは市販の穴あき発泡を使います。貫通していないボディは穴あきの発泡でも良いのですが、穴の処理がかなり面倒です。穴の開いていない発泡スチロールは最近見かけませんので、太いものを買ってきて、それを切って使います。
ボディに穴を空けます。私はモーターに針をはさみ、回転させて開けています。小さな拘りですが、穴は押し広げる感じです。後で、押し広げた所が戻りしっかり接着できるのではないかと考えています。
![]() |
|
![]() |
用意のできたカーボンの足と発泡スチロールです。接着剤(Super-X)を付け発泡スチロールに足を通しておきます。
![]() |
|
![]() |
いよいよボディの削り(整形ですが)最初に次の写真のように荒削りをしておきます。ポイントは「表面の硬い部分」を削り落としておくことです。「表面の硬い部分」が残っているとカッターが弾かれてうまく削れません。モーター(ドリル)で回して削りますので、荒削りで十分です。
削りは、カッターとペーパー(水ペーパ 240,400番)を使います。カッターでほとんど整形を行い、ペーパーはむらを直す程度です。水ペーパですが、整形の場合は水をつけません。途中メジャーで大きさをチェックします。カッターは発泡スチロールにほぼ直角に当てて削ります。コツは最初、カッターで円柱を削り出し、その後整形することです。その際、掃除機は手元に置いておきましょう。
以下の写真を参照してください。
![]() |
|
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
|
![]() |
![]() |
|
![]() |
最後の写真は、削り終わったタナゴウキです。
4.塗り
下塗りは、3回行います。新うるし(カシューうるし)の「透き」を使います。最初の1回目は、薄めに。後の2回は普通です。乾かすときは、適宜上下を交代します。その時、洗濯バサミを使うと便利です。
もちろん、塗った後は、「水ペーパー」の400番で研ぎ出します。その後、また下塗りを行います。
![]() |
|
![]() |
次の写真は、3回目の下塗りが終わったものです(研ぎ出しは掛けていません)。まだ、斑が見えますが、これくらいなら後の塗りで消えますので、気にしないことにします。
次は「マイラー」付けです。まず、ウキに新うるしの「黒」を塗ります。ほんの少し薄めにします。その直後に、マイラーを小さなスプーン(私はインスタントコーヒーのマゼラーを使っています)にマイラーを掬い、一旦、ひっくり返します。すると、スプーンの表面に少し残ります。それを、スプーンの柄を指で叩き、少しずつ落ちる粉をウキに受けます。
![]() |
|
![]() |
下は、マイラーを振りかけた直後のウキです。
![]() |
|
![]() |
マイラーを掛けた後は、研がずに新うるしの「本透明」を塗ります。1回目は薄めに。そして、研がずに2回目の「本透明」を塗ります。
「本透明」を2回掛けた後のウキです。光線の具合でよく見えませんが、マイラーがきれいに見えます。トップは、蛍光塗料を塗りますので、マイラーを掛けていません。
このままではマイラーの角が出ていますので、研ぎだします。この研ぎ出しはかなりきつく掛けます。場所によっては、マイラーまで削ることがあります。
マイラーはアルミ箔に色を付けたものです。少しだけ削ると、色が取れ、銀色(アルミ色)が出て、それはそれで良いものです。
下の写真は、さらに薄めの「本透明」を掛けたものです。本体は、さらに研ぎだした後、
「ウレタン」のクリアーを掛るだけですので、完成時の状態に近いものです。
右は、本体に最後の研ぎ出しを掛けたものです。
本体に「ウレタン」のクリアーを掛ける前に、トップの処理、蛍光塗料の塗り、足の処理、筋入れなどの処理が残っています。ああ、タナゴウキですので、糸通しも作らないといけません。まだまだ、作業が残っています。
![]() |
|
![]() |
5.トップの処理
製作中のタナゴウキの中にトップを付けているものがあります。まず、細いトップが付いている方のウキですが、トップの長さを調節しなければなりません。 へらウキの場合はボディ(足を含む)より少し短めが標準です。ウキを眺めて、ボディ(足を含まない)より少し短めにしました。長さは20mmほどになります。切り取った後、トップはペーパーで角を取っておきます。
もう1つのトップ付きのウキは、トップにパイプを被せて、トップを見やすくし、その代わりトップは短くします。まず、手持ちのパイプの中から適当なものを選びます。下の写真の、1番下のものにしました。少しパイプの穴が小さいのでドリルで広げ、様子を見ます。今までのトップは短く切り取ります。拡大した写真を見ますと判るように、繋ぎ目に段ができています。またトップに穴が開いたままです。
![]() |
|
![]() |
トップを接着剤(Super-X)で接着します。はみでた接着剤が繋ぎ目の段を埋めます(少しですが)。後は、塗料で誤魔化せるでしょう。トップの穴は接着剤(Super-X)で埋めます。今回は、写真でも判るように、丸く盛り上がって、うまく出来ました。トップの穴を巧く埋めるコツは温度管理です。盛り上がらない時は、接着剤の追加するのは勿論ですが、暖かい所に置きます。盛り上がりすぎた時は、冷たい所に置くことです。乾燥後、トップは塗料の付を良くする為に、表面に軽くペーパーを掛けておきます。
![]() |
|
![]() |
次の写真は、蛍光塗料と黒線を入れた所です。黒線はカシュー漆で入れています。左が黒線を入れる前、右が黒線を入れた後です。蛍光塗料は十分乾燥させて、それから黒線を入れます。蛍光塗料を塗るごとに1日乾燥させていますので、黒線を入れるまでに3日間掛けています。
黒線は、「面想筆(面相筆とも書く)」と言う、非常に細い筆を使います。実は、私は今回ここで失敗をやらかして、黒線が少し太くなってしまいました。「面想筆」から毛抜きで毛を抜いて、もっと細い筆を作ってそれを使えば良かったと思っています(もっと細い筆は作っているのですが、それを使わなくても良いだろう手抜きしました)。
写真では、蛍光塗料に斑があるように見えますが、光線の具合です。それほど斑はありません。へらウキの場合は、トップに蛍光塗料と黒線を入れるとトップは完成ですが、今回は、透明のウレタン塗料を塗りますので、斑は誤魔化せるでしょう。
ボディに飾りの白線を入れます。白のカシュー塗料は乾きにくいので、私はシンナーを使って薄めて塗っています。さらに今回は、足とボディの境に金線を入れます。今回は、巧く入ったものも、巧く入らなかったものもあります。どうも、金粉を入れすぎると良くないようです。
タナゴウキの足はカーボンを使っていますので、カシューを塗らなくても良いのですが、一応カシューの「本透明」を塗ります。竹の足のときは、最低2回は塗るのですが、カーボン足ですので1回塗りです。この上にはもう、塗料は塗りませんので丁寧に塗ります。注意点は、カシュー薄め液(私はテレビン油を使用)を多めに入れて、薄目の「本透明」を使います。さらに、吉野紙で漉した「本透明」を使っています。ただし、本物の吉野紙は高いので、代用品です。塗る部分は、金線を含めた下の部分です。乾燥は、
笊のようなものを使っています(100円ショップで売っている安物です)。1本は、笊の目より細かったので別方法です。別に隠すつもりはありません。発泡、キラキラ塗り塗り編(1)(2)で紹介しているウキゴムに刺して乾燥させました。
![]() |
|
![]() |
先ほども書いたように、足はこれで出来上がりですので、十分乾燥させます。今回は4日ほど乾燥させました(仕事があってウキ作りができないこともありました)。
足の乾燥が終わったタナゴウキです。
次の工程は、糸通しです。まず、ドリルで穴を開ける積もりでしたが、滑ってうまく行きません。針で、小さな穴を開け、その穴をドリルで整形しましたが、1.5号のラインを穴に通す時に、針で穴を確認しないといけませんでした(穴を広げないと、ラインを差し込む事が出来ませんでした)。次回、作る時は(そういう機会があればですが)針だけで
穴を開けた方が良いでしょう。
ラインを短く切り、接着剤(Super-X)で一方だけ接着します。1日後、接着を確認し、ラインの長さを調節します。実際にもう1方の穴にラインを差し込んでラインの長さを調節をします(ラインは予め長めに切っています)。後は接着剤を付けて接着します。
実際やって見ますと、小さい穴にラインを差し込むのは大変でした。さらに2度目の接着時に、ビンセットでラインを曲げて差し込むのは非常に辛かったです。やっと差し込んでも、ラインの弾力で少し戻って来ます。
両方の穴にラインを差し込み、注意しながら瞬間接着剤を使って両方を一気に接着する方が簡単だと思います。
下の写真は、糸通しまで出来上がったものです。小さな糸通しが見えるでしょうか。
さて、最後です。ボディとトップに透明のウレタン塗料を塗ります。カシュウ漆の「本透明」でも良いのですが、「本透明」はごくわずかですが黄ばみます。蛍光塗料の上に塗りますので「ウレタン塗料」を選択しました。
ウレタン塗料は薄め液を入れて薄めにします。ウレタン塗料も乾いて「ああ、やっと出来上がった」と思ったら、半数ほどのウキで、糸通しの所に、薄いウレタンの膜が張っています。膜を取り除き、周辺のウレタンをできるだけ水ペーパーで取り除き、再びウレタン塗料を塗りました。塗った直後、糸通しを見ますと、膜を張っているものがあります。これは、注意していましたので、爪楊枝で膜を破りました。塗った直後ですので、膜を破るとウレタン塗料は適当に広がり、これで乾燥を待つだけとなりました。
![]() |
|
![]() |
で、出来上がった写真です。
タナゴウキは、小さくて疲れました。次に作るときは、もっと巧く作れると思いますが、当分、作る気は起こらないでしょう。